パケットフィルタリング - パケットフィルタリング
IP アドレス・ポート番号・プロトコルに基づいてパケットを許可・拒否する最も基本的なファイアウォール方式。
概念図
ステートレス型とステートフル型
パケットフィルタリングは L3/L4 のヘッダ情報のみを見て可否を決定するシンプルな方式ですが、状態を追跡するか否かで運用性が大きく変わります。
| 観点 | ステートレス型 | ステートフル型 |
|---|---|---|
| 判定材料 | 個々のパケットのヘッダ(IP / Port / Protocol / Flag) | ヘッダに加え、コネクション状態テーブル |
| 戻りトラフィックの扱い | 明示的に逆方向ルールが必要 | 既存コネクションの戻りを自動許可 |
| 代表実装 | Cisco ACL(基本形)、AWS NACL | iptables / nftables、conntrack、AWS Security Group |
| 誤設定リスク | 戻りルールの穴あけで broad な許可になりがち | ルール数は少ないが conntrack テーブル枯渇に注意 |
| 性能特性 | 状態を持たないため高速・省メモリ | 状態管理のぶんオーバーヘッドがある |
現代のサーバー用途ではステートフル型が事実上の標準で、TCP/UDP/ICMP の会話を ESTABLISHED,RELATED として追跡し、戻りパケットに個別ルールを書かずに済むのが大きな利点です。
機能と限界
パケットフィルタリングは「どの IP のどのポートへの通信を許すか」という粒度の制御に優れる一方、HTTP ボディや TLS の中身など L7 の意味を理解できません。
| レイヤ / 項目 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| L3(IP) | 送信元・宛先 IP レンジの許可/拒否、スプーフィング防止の基本 | 正当な IP から来る攻撃の識別 |
| L4(TCP/UDP) | ポート・フラグ(SYN/ACK)・コネクション状態に基づく制御 | アプリケーションレベルの異常検知 |
| L7(アプリ層) | 原則対象外(ヘッダしか見ない) | SQLi / XSS / コマンドインジェクション等の検知 |
| 暗号化通信 | 宛先ポートの制御のみ | TLS 内部の検査(NGFW / WAF の領域) |
このため、パケットフィルタは「到達性を最小化する」ための第一層として使い、アプリケーション攻撃の検知は WAF や NGFW、IDS/IPS に任せる多層防御が前提になります。
代表的な実装と配置
オンプレミスからクラウドまで、パケットフィルタリングは様々な形で実装されています。
| 実装 | レイヤ | 状態管理 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| iptables / nftables | Linux カーネル | ステートフル(conntrack) | サーバー単体のホスト FW、ゲートウェイ |
| Cisco ACL / Juniper firewall filter | ルーター / L3 スイッチ | ステートレスが基本 | コアネットワーク、境界ルーター |
| AWS Security Group | VPC / ENI 単位 | ステートフル | EC2 / RDS 等リソース単位のインバウンド/アウトバウンド制御 |
| AWS NACL | サブネット単位 | ステートレス | サブネット境界の粗粒度制御、緊急遮断 |
| GCP Firewall Rules / Azure NSG | VPC / VNet | ステートフル | クラウドネイティブな境界制御 |
クラウドではインスタンス単位の Security Group とサブネット単位の NACL を併用し、「最小の到達性」を構成するのが典型パターンです。
特に AWS NACL はステートレスなので、エフェメラルポートの戻り許可を忘れると通信が壊れる点に注意が必要です。
関連トピック
ファイアウォール- ネットワークトラフィックを監視・制御し、不正なアクセスを遮断するセキュリティ装置。パケットフィルタリングやステートフルインスペクションなどの方式がある。 WAF(Web アプリケーションファイアウォール)- HTTP/HTTPS トラフィックを検査し、SQLインジェクションやXSSなどの Web アプリケーション攻撃を検知・遮断する。 次世代ファイアウォール(NGFW)- アプリケーション識別・IPS・SSL復号などを統合した高機能ファイアウォール。従来のポートベースの制御を超えた制御が可能。 IDS/IPS(侵入検知/防止システム)- ネットワークやホストへの不正アクセスをリアルタイムに検知(IDS)または検知して遮断(IPS)するシステム。 